カビの皮膚疾患

皮膚にガサガサや赤みを生じる原因としてカビ(真菌)の感染があります。最も代表的なカビによる皮膚真菌症は水虫(「白癬(はくせん)」)です。その他の皮膚真菌症としては、カンジダ(「カンジダ症」)マラセチア(「癜風」、「マラセチア毛包炎」)などによるものがあります。

水虫(足・爪白癬)

水虫(白癬)とは? 水虫の原因は?

水虫とはカビの一種である白癬菌(はくせんきん)が、足の裏・足指の間の皮膚や足の爪にすみついて増殖してしまう皮膚の病気です。白癬菌は高温多湿な環境で増殖しやすくなるので、皮膚の角層の下にまで増殖するとかゆみや水疱を起こして夏に悪化することが多いですが、冬の時期でも角層内に白癬菌が残っていると水虫の症状を繰り返します。日本人の4人に1人は水虫にかかっていると言われ、皮膚科に来院される症状のトップ5に入る、頻度の高い皮膚疾患です。

水虫(白癬)の症状は?

症状は足の指の間の皮が白くなり、ポロポロ剥けるなどの症状がみられます。ひどくなるとかゆみを伴って小さな水疱がみられることもあります。白癬菌は高温多湿な環境で増殖しやすいので、夏は主お嬢が強くみられることが多いですが、秋から冬の間は症状が治る方も多いです。季節によって症状がおさまるため、医療機関を受診せずに無治療で様子をみている方も多いですが、長くわずらっていると、爪も部分的に白くなりはじめる爪水虫も合併することがあり注意が必要です。爪水虫は、正式には「爪白癬(つめはくせん)」と言います。白癬菌が爪の表面や内部に侵入・増殖し、白くにごった爪になり、進行すると厚くなってもろく崩れやすい爪になるのが特徴です。また、白癬は足・爪以外にも生じることがあり、手にできる「手白癬」や、腕、脚、股の付け根やおしりなどに「体部白癬(たいぶはくせん)」を生じることがあります。体部白癬はカサカサした環状(輪っか状)の赤い斑としてみられることが多いですが、湿疹の塗り薬などを使用していたりしていると典型的な症状を呈さない場合もあります。

水虫(白癬)の診断と検査は?

皮膚や爪の症状が水虫(白癬)によるものかどうかは、皮膚や爪の表面を軽くこすり、顕微鏡で観察して白癬菌がいるかどうかを検査して診断します。診察室でその場ですぐに検査して数分で判定できる検査です。足などに水虫と同じようなカサカサや水疱を生じる皮膚の病気はたくさんあるため、水虫を疑った場合は、治療のためにもしっかりと検査をして診断することが重要です。

水虫の治療は?

水虫(白癬)の部位や範囲によって、塗り薬(抗真菌外用薬)や飲み薬(抗真菌内服薬)を使い分けて治療します。足の水虫であれば1ヶ月程度、爪の水虫であれば6ヶ月が症状改善にかかる平均的な期間です。爪の水虫(爪白癬)は、爪の中に白癬菌がすみついて増殖しているので、治療に時間がかかります。塗り薬でも、飲み薬でも完全に爪の症状が治るのには半年から1年以上かかることが多いので根気強く治療を続けることが大切です。最近ではより効果の高い薬が開発され、治療効果は以前よりも高くなっています。なお、飲み薬の場合は、まれに肝機能障害などの副作用が出現することがありますので定期的に血液検査が必要になります。患者様の生活スタイルや治療費に合わせて治療法をご提案しておりますのでお気軽にご相談ください。水虫(白癬)の治療は顕微鏡検査による適切な診断が重要で、特に爪白癬の場合は進行すると完治するまでに長い時間を要するので早期のうちに治療を始めることがポイントです。毎年繰り返す足のガサガサや、ずっと治らない爪の白色変化がある場合は一度受診することをお勧めしております。

カンジダ症

カンジダ症とはどのような病気ですか? どうやって発症しますか?

カンジダ症は、人の皮膚や口腔・外陰部などの粘膜(ねんまく)にもともと常在しているカンジダ属の真菌(カビ)が過剰に増殖して病変部を生じます。原因菌であるカンジダを増殖させる要因としては、高温多湿な環境、多汗、局所の長期の蒸れなどが関係し、全身症状との関連では、免疫低下、肥満、糖尿病、抗菌剤による菌交代現象などが関係していることがあります。男性・女性の外陰部に生じるカンジダ症は性感染症として若年者も含めどの年代の人にも生じますが、その他の部位のカンジダ症は、上記の要因が加わった乳児、高齢者、免疫抑制状態の人にみられることが多いです。

カンジダ症ではどのような症状がみられますか?

皮膚のカンジダ症では、股(また)、手足の指と指の間や爪、わきの下や腹部などの皮膚のくびれ部分、絆創膏や衣服などに覆われて蒸れる部位などに境界が明瞭な赤い斑やぐじぐじしたびらん、かさかさ(鱗屑(りんせつ)),小さな黄色いブツブツ(小膿疱(のうほう))などがみられます。周りにも衛星病巣と呼ばれる同じような小さな病変部がみられることが多いです。外陰部に生じるカンジダ症では、男性の亀頭部・包皮部、女性の膣にかゆみやヒリヒリした刺激感を伴う発赤・びらん(ぐじぐじした状態)を生じ,表面に浸軟(しんなん)した白いかす状のものが付着します。

カンジダ症の診断はどのようにできますか?

カンジダ症の診断は、皮膚や粘膜の病変部のかさかさ(鱗屑(りんせつ))、小さい黄白色のブツブツ(小膿疱)、爪などを採取し、顕微鏡で観察してカンジダの菌要素を確認することで診断できます。

カンジダ症の治療はどのようにしていますか?

カンジダ症の治療は、抗真菌薬の外用(塗り薬)で通常数週間で改善します。また、患部を清潔に保って、蒸れないように乾燥させることでより早く治り、再発を予防する効果もあります。病変部位が広範囲に及ぶ場合や重症の場合には、抗真菌薬の内服(飲み薬)で治療することもあります。

治療や生活上で注意することはありますか?

高温多湿な環境、多汗、局所の蒸れ、入浴・洗浄を長期間できない状態などはカンジダ症の誘発・再発原因となりますので、清潔を保って、なるべく上記の悪化要因を避けることが重要です。また、外陰部のカンジダ症は、性行為によって感染することがあるのでパートナーにも同様の症状がある場合には同時に治療を行うことが大切です。

癜風(でんぷう)

癜風(でんぷう)とはどのような病気で、どのような症状がみられますか?

癜風(でんぷう)は、マラセチアというカビ(真菌)の一種によって生じます。マラセチアは人の皮膚に常在している真菌ですが、過剰に増殖すると皮膚に病変を作ります。癜風は、胸、背中、肩、首、わきの下、小児では顔などに、丸い形の淡い茶色,白色,紅色の斑を呈する病変部が多発して、拡大すると融合してよりまだら状に大きくなっていきます。軽いかゆみを伴うことがあります。病変部を指で軽くこすると、バラバラと細かいフケのようなもの(粃糠様鱗屑(ひこうようりんせつ))が取れ落ちます。原因真菌であるマラセチアは皮膚の皮脂を好むため、皮脂の分泌の盛んな思春期以降の20~30代に多くみられ、多汗、高温多湿などが悪化因子となり夏に特に多くみられます。

癜風(でんぷう)はどのように診断できますか?

癜風は、発疹の形態などと合わせて、病変部をこすって取れたフケ状のもの(鱗屑(りんせつ))を顕微鏡で観察して、マラセチアの菌成分を確認して診断することができます。

癜風(でんぷう)の治療はどのようにしていますか?

癜風(でんぷう)の治療は、抗真菌薬の外用(塗り薬)で治療でき、通常数週間で改善します。症状が広範囲な場合や再発を繰り返す場合には、抗真菌薬の内服(飲み薬)で治療することもあります。

治療や生活上で注意することはありますか?

癜風(でんぷう)の原因菌のマラセチアは、皮脂を多く含む部位で増殖し、高温多湿な環境、多汗などで悪化するので、温度・湿度の調節や蒸れない衣服、発汗後のシャワー浴などを心がけることが大切です。また、入浴時のミコナゾール配合シャンプーの使用も有効です。マラセチアはもともと皮膚の常在菌のため再発することも多く、治療で一度症状が消えても上記のことを生活上で注意することが重要です。また、治療で治癒後も病変部に色素脱失(皮膚の元の色が抜けて白くみえる状態)が長期に残ることがあり、特に野外の紫外線暴露で増悪することがありますので病変部は遮光することも大切です。

マラセチア毛包炎

マラセチア毛包炎(もうほうえん)とはどのような病気で、どうやって生じますか?

マラセチア毛包炎は、マラセチアというカビ(真菌)の一種が人の背中などの皮膚の毛の組織(毛包)の中で増殖することで生じます。マラセチアは人の皮膚にもともと常在している真菌ですが、毛包で過剰に増殖すると炎症を起こして毛包炎を生じます。原因真菌であるマラセチアは皮膚の皮脂を好むため、皮脂の分泌の盛んな思春期以降の20~30代に多くみられ、多汗、高温多湿、衣服の蒸れなどが悪化因子となります。また、アトピー性皮膚炎などでステロイドを使用している場合などでみられることもあります。

マラセチア毛包炎はどのような症状がみられますか?

見た目はニキビ(痤瘡(ざそう))と同じような赤い点状のブツブツ(紅色丘疹(きゅうしん))を生じ、その中央に黄白色の膿(膿疱)がみられますが、マラセチア毛包炎は、ニキビと異なり面皰(めんぽう)(白ニキビや黒ニキビでみられる毛穴が詰まって皮脂が貯まった状態)がみられず、顔よりも胸、背中、肩、上腕の外側などにみられることが多いのが特徴です。軽いかゆみを伴うこともあります。

マラセチア毛包炎はどのように診断できますか?

マラセチア毛包炎は、上記の発疹の形態や分布などから診断されます。また、赤いブツブツの内容物を採取し顕微鏡で観察して、マラセチアの胞子(ほうし)成分を確認して診断することができます。

マラセチア毛包炎の治療はどのようにしていますか?

マラセチア毛包炎の治療は、抗真菌薬の外用(塗り薬)で治療し、症状が広範囲な場合や再発を繰り返す場合には、抗真菌薬の内服(飲み薬)で治療することもあります。

治療や生活上で注意することはありますか?

マラセチア毛包炎の原因菌のマラセチアは、皮脂を多く含む部位で増殖し、高温多湿な環境、多汗などで悪化するので、温度・湿度の調節や蒸れない衣服などを心がけることが大切です。マラセチアはもともと皮膚の常在菌のため再発することも多く、治療で一度症状が消えても上記のことを生活上で注意することが重要です。アトピー性皮膚炎などでステロイドを使用されている場合には、マラセチア毛包炎の赤いブツブツの部位に長期間ステロイドを塗ると悪化することがあるのでその部位には避けて塗るなどの注意が必要なことがあります。