単純ヘルペス・単純疱疹(口唇(こうしん)ヘルペス・性器ヘルペス)

単純ヘルペスとは? どのような症状ですか?

別名、「単純疱疹」とも言い、単純ヘルペスウイルスの感染によってピリピリした痛みを伴って皮膚に小さな水疱(水ぶくれ)やびらん(皮膚がめくれてぐじぐじした状態)を生じる病気です。口唇(こうしん)や性器に生じることが多く、それぞれ「口唇(こうしん)ヘルペス」や「性器ヘルペス」と呼ばれます。また、アトピー性皮膚炎のある患者様では広範囲にヘルペスの症状がみられる「カポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)」を起こすことがあります。初感染のときは皮膚の症状が出た後に発熱やリンパ節の腫れが出現し、症状が重症化することがあります。また、発熱、疲労・ストレス、生理、日焼け、外傷などによって神経節に潜伏していた単純ヘルペスウイルスが再活性化して再発を繰り返すことがあります。

単純ヘルペスの治療

症状が極軽い場合には、抗ヘルペスウイルス薬の外用薬(塗り薬)で治療することもありますが、効果が局所にしか作用しないため、通常は抗ヘルペスウイルス薬の内服薬(飲み薬)で治療します。また、年に何度も頻繁にヘルペスの症状の再発を繰り返す場合には、今後再発したとき用の内服薬を処方して治療したり、性器ヘルペスの場合には再発抑制のための予防的な内服薬で治療します。カポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)や重症の口唇・性器ヘルペスでは細菌(ばい菌)の感染を合併していることがあるのでそのような場合には抗菌剤の併用や塗り薬の処置も一緒に行うことがあります。

生活で気を付けること

単純ヘルペスは疲労、ストレス、発熱、日焼けなどによって再発することがあるので可能な限りこれらの誘発要因を避けるように注意することが大切です。前兆となる症状が出現したらすぐに内服薬(飲み薬)を開始することが大事になります。また、他の人への感染は水疱やぐじぐじした部位を直接皮膚が接触することで起きますので、口唇ヘルペスの場合は直接接触やタオルや手の指などを介して、性器ヘルペスは性行為などによって感染するので注意が必要です。

帯状疱疹

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは? どのような症状と経過ですか? 診断は?

「つづらご」、「ひっつらご」、「おびくさ」、「胴まき」などとも呼ばれます(地域によって呼び名は異なりますが)。水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virusの略でVZV)の再活性化によって発症します。生涯で初めてこのウイルスに感染したときは「水ぼうそう(水痘)」として発症します。水ぼうそうが治った後も、体の神経節にウイルスが潜伏し、疲労、ストレス、加齢、免疫低下などが引き金となってウイルスが再活性化して神経伝いに皮膚に移動し、発症します。一生のうちで約30%の人が帯状疱疹を発症すると言われており、高齢者に発症することが多いですが、子供を含めどの年齢層でも発症します。皮膚の症状が出現する前からピリピリとした痛みが先に出現し、その数日後から赤い斑点と水疱(水ぶくれ)が体の右側か左側のいずれか一方のみにみられるのが特徴です。皮膚の症状は胸~背中にかけての部位や顔にみられることが多いですが、全身どの部位の皮膚にも発症します。発疹が出現する前の痛みだけのときには頭痛、肋間神経痛、腰痛などと診断されていることもあります。合併症としては、運動神経麻痺、脳脊髄炎、顔の領域に帯状疱疹がみられる場合には、眼、耳、顔面神経の合併症などがみられることがあります。また、免疫抑制の状態で発症した場合には、「汎発性帯状疱疹」といって小さな水疱が全身にみられることがあり、このような状態では水ぼうそうと同様に感染力が強く、また合併症がみられることが多いので注意が必要です。特に、重症の帯状疱疹、全身にみられる汎発性帯状疱疹や複数回に帯状疱疹を起こす場合には、癌やHIV感染症など免疫不全の病気を合併していることがありますので全身のスクリーニング検査をお勧めしています。通常、帯状疱疹の診断は、特徴的な皮膚の症状から視診で診断は可能です。帯状疱疹の皮膚症状は、赤い斑点や水ぶくれがカサブタになってその後、皮膚の症状が消えていくと痛みもおさまっていきますが、皮膚の症状がよくなった後に痛みが続くことがあり、これを「帯状疱疹後神経痛」と呼びます。皮膚の症状が出現しているときの痛みは傷害受容性疼痛という性質の痛みであるのに対して、この帯状疱疹後神経痛は神経障害性疼痛という皮膚の症状が出現しているときの痛みと性質の違う痛みになります。

帯状疱疹を予防する方法や予防接種はありますか?

日本人の成人の90%以上は帯状疱疹の原因ウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜伏していて、80歳になるまでに約3人に1人が帯状疱疹になると言われています。帯状疱疹を発症すると、顔面に発症した場合には目や耳に障害を生じたり、顔面神経麻痺を生じることがあります。皮膚症状が治まった後も神経痛が長期に続く帯状疱疹後神経痛が後遺症として残ってしまうことがあり、特にご高齢の方ではリスクが高いと言われています。帯状疱疹にかからないためには、日頃から体調管理に心がけて、免疫力が低下しないようにすることが大切です。また、50歳以上の方は帯状疱疹の予防接種が有効です。帯状疱疹ワクチンである「シングリックス」は、病原性を無くしたウイルスの一部を成分とした不活化ワクチンで、2ヵ月間の間隔を空けて2回注射することで効果があります。予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、以前に帯状疱疹にかかった方にも予防効果があります。

帯状疱疹の治療は?

治療の基本は抗ヘルペスウイルス薬の全身投与(内服薬または点滴)になります。症状が軽症から中等度の場合には抗ヘルペスウイルス薬の内服薬(飲み薬)で治療が可能です。痛みの症状に対しては痛み止めの飲み薬と皮膚症状のある部位には炎症の程度に応じて塗り薬も併用します。重症または合併症のある帯状疱疹の患者様の場合は点滴での治療が必要になりますので、近隣の病院へ紹介させていただくこともあります。皮膚の症状が治癒した後に帯状疱疹後神経痛がみられる場合では、いくつかの飲み薬を組み合わせて治療することが多いです。帯状疱疹後神経痛が重度の場合には神経ブロックなどを行うペインクリニックを紹介させていただくこともあります。50歳以上の患者様では帯状疱疹の予防のための弱毒生ワクチンである水痘ワクチンの摂取も可能です(ただし、免疫抑制状態の方や免疫抑制をきたす治療を受けている方は摂取できません)。

生活で気を付けることは?

抗ヘルペスウイルス薬の治療中はなるべく安静を保ち、負荷のかかる仕事や運動は控えていただくことが大切です。皮膚の発疹が出現している時期は、水ぼうそう(水痘)にかかったことのない乳幼児などに水ぼうそうを発症させてしまう危険性があります。また、痛みは冷たい風などで増強されますので患部をなるべく冷やさないようにすることが大切です。