「梅毒についてのトピック:最近の動向は?/どのような症状(皮膚・陰部・口の症状、脱毛など)がでますか?/感染経路や治療は?」

最近、よく新聞やニュースで梅毒(ばいどく)の発生が増えていることをよく耳にすると思います。皮膚の症状がでることが多く、皮膚科を受診されることが多い病気です。本日は梅毒とはどんな病気なのか、最近の動向、感染経路、症状、検査、治療などについてお話します。

                        (渋谷スクランブル皮膚科)

「梅毒とはどんな病気?」

梅毒は梅毒トレポネーマという病原菌によって生じる感染症です。

「感染経路は?」

感染はほとんどが性行為によって起こり、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などの性的接触やキスなどにより、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。

「最近の感染数の動向は?」

梅毒は2010年代以降から増加傾向となり、特に2021年以降大きく増加し、厚生労働省の梅毒感染の報告では、2014年は年間2000人以下であったものが2022年では10月下旬の時点で10,000人を超えています。男性では20代~50代、女性では20代の感染数が特に突出して増加しています。この報告数はすべての感染患者数を網羅しているわけではないので実際にはかなりもっと多いものと考えられています。

厚生労働省HPより(2021年は10月8日集計値(暫定値)、2022年は11月9日時点集計値の報告を対象)

「梅毒の症状は? 感染するとどうなりますか?」

性行為などで感染した直後には通常何も症状はなく、潜伏期間(症状が何もみらない時期)を経て、感染行為の約3週間前後から陰部、肛門、唇(くちびる)、口の中などの感染した部位に初期硬結(こうけつ)と呼ばれる赤みを伴った小豆から指先くらいのしこりを生じ、そこに硬性下疳(こうせいげかん)と呼ばれる皮膚がえぐれた傷のような状態を生じます。その際、股の付け根のリンパ節が痛みを伴わずに腫れることが多いです。これらの症状は痛みの症状がないことが多く、数週間で自然に消えてしまうため症状が出ていることや感染していることに気づかないことも少なくありません。

感染後3ヵ月以上経過すると、梅毒トレポネーマの菌が全身に広がり、バラ疹(数mmから2cmくらいの大きさまでの赤い斑点が手のひら、足の裏を含めた全身の皮膚にみられるもの)、丘疹性梅毒・梅毒性乾癬(バラ疹の3週間後くらいに生じ、赤い斑点とガサガサした赤い局面がみられるもの)、扁平コンジローマ(陰部、肛門の周囲にジュクジュクした隆起した病変がみられるもの)、梅毒性粘膜疹(口の中、舌、喉の扁桃などに白色の病変がみられるもの)、梅毒性脱毛(感染してから6ヵ月後くらいに多発する円形の脱毛、または頭髪全体に脱毛がみられるもの)など、さまざまな皮膚症状を生じます。

これらの症状は無治療でも自然に消えていくことがありますが、症状が消えても感染力は残っているので注意が必要です。また、感染してから3年以上経過すると皮膚の下にゴム腫という硬いしこりを生じたり、10年以上すると心臓、血管、脳に病変を生じて大動脈炎や神経症状を起こすことがあります。また、妊娠中の梅毒に感染していると胎盤を通じて胎児にも感染するので注意が必要です。

「梅毒の検査・診断は?」

梅毒は、血液検査で診断することができます。採血した血液でRPR法と梅毒トレポネーマ抗体法という2つを測定し、これらの検査法の数値と皮膚や粘膜の症状から治療が必要な感染性のある梅毒(活動性梅毒)なのか、治療が不要な梅毒(陳旧性梅毒)なのかを診断・判定します。

「梅毒の治療は?」

治療は、抗生剤の飲み薬で治療します。治療効果の判定は、血液検査でRPR法と梅毒トレポネーマ抗体法の数値の変化で判定します。

「梅毒は治療しても再感染しますか?」

梅毒は治療により治癒しても、免疫ができないため、梅毒に感染している人との性交渉などで何度でも再び感染することもありますので注意が必要です。

本日は、最近、国内で増加している梅毒について最近の動向と病気の特徴についてお話しました。皮膚、性器、口、脱毛などの症状がある場合は皮膚科などの医療施設の受診をお勧めします。当院でも症状がある患者様の診察と検査、診断、治療を行っておりますのでお気軽にご相談ください。