手汗ボトックスのデメリットは?握力への影響・費用と他の手汗治療との違いを皮膚科専門医が解説
手汗治療のひとつであるボトックス注射には、主に4つのデメリットがあります。握力や指先でつまむ力が一時的に弱まること、麻酔をしないと注射が非常に痛いこと、保険が使えないこと、そして効果が4〜6か月ほどで切れることです。
一方で、毎日薬を塗る手間がなく、1回の注射で数か月にわたって手汗を抑える効果が期待できる治療でもあります。
この記事では、それぞれのデメリットの理由と渋谷スクランブル皮膚科での対策、ほかの手汗治療との違いを、皮膚科専門医・下方 征院長の監修のもとで解説します。
目次
01 手汗ボトックスとは?汗を出す指令を止める注射
手汗ボトックスは、手のひらにボトックスを注射して、汗を出す指令を止める治療です。
汗は、神経から汗腺(汗を出す小さな器官)へ「汗を出せ」という信号が届くことで出ます。ボトックス(ボツリヌストキシン製剤)は、この信号の受け渡しを一時的に止める薬です。手のひら全体に少しずつ注射することで、手汗を抑える効果が期待できます。
ボトックスの量は「単位」という数字で表します。効果は注射の1〜2週間後から出はじめ、平均で4〜6か月続きます。薬の働きは時間とともに弱まるため、手汗がまた出るようになってきて、気になるタイミングで再び注射します。
02 手汗ボトックスのデメリットは?4つを一覧で確認
手汗ボトックスのデメリットは、「握力・つまむ力」「麻酔が必要なこと」「費用」「効果の期間」の4つに整理できます。気になるものを、左の列から探してみてください。
| デメリット | どういうこと? | 当院での対策 |
|---|---|---|
| 握力・つまむ力が弱まる | 注射後の数週間のうちに、握力や指先でつまむ力が一時的に弱まることがある | 親指の付け根はボトックスの量を少なめにし、浅い層に注射して影響を抑える |
| 麻酔が必要 | 手のひらは神経が多く、ブロック麻酔をしないと非常に痛い(麻酔クリームではほとんど効果がない) | 下方医師がエコーで神経の位置を確かめて行うブロック麻酔(片手8,000円) |
| 費用 | 保険が使えない自由診療 | 片手33,000円(50単位)から。保険の塗り薬から始める相談も可能 |
| 効果の期間 | 効果は平均4〜6か月。続けるには繰り返しの注射が必要 | 片手100単位をしっかり打つことで、長期の効果が期待できる |
次の章から、それぞれを詳しく説明します。
03 握力は落ちる?一時的に握力やつまむ力が弱まることがあります
手汗ボトックスでは、一時的ですが、握力が下がったり、指先でつまむ力が弱まったりすることがあります。時間とともに回復していくもので、当院ではボトックスの量・注射の深さと部位・日程を調整して、影響を抑えるようにしています。
力が弱まるのは、手のひらの皮膚のすぐ下に、指を細かく動かす小さな筋肉があるためです。汗腺に向けて注射したボトックスがこの筋肉まで少し広がると、指先に力が入りにくくなります。
海外の研究でも、指先でつまむ力が注射の2週間後ごろに弱まったと報告されています。日本皮膚科学会のガイドラインでは、こうした指の力の低下は薬の量が多いほど起こりやすいものの、多くは一時的で、様子を見るうちに良くなるとされています。
出典:Saadia D, et al. Neurology. 2001/日本皮膚科学会 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023
当院での説明と、量・注射の深さと部位・日程の調整
渋谷スクランブル皮膚科では、注射の前に、この力の変化についてご説明しています。そのうえで、ボトックスの量・注射の深さと部位・日程を、患者様の手の使い方に合わせて調整します。
- ・ボトックスの量:汗の量が多い方には片手100単位をおすすめしていますが、量が多いほど握力やつまむ力への影響も出やすくなるため、お仕事や趣味での手の使い方を伺ったうえで、量を一緒に決めていきます
- ・注射の深さと部位:親指の付け根のふくらみ(母指球)には指を動かす筋肉が集まっているため、この部分はボトックスの量を調整して少なめに打ちます。また、汗腺は皮膚の浅いところにあるため、ボトックスが浅い層に届くように注射し、その下の筋肉に広がりにくくしています
- ・日程:力の変化は注射後の数週間に出ることがあるため、試合や演奏、細かい手作業が続くお仕事の予定がある方は、その前を避けて日程を決めます
04 注射は痛い?当院はブロック麻酔で感覚をなくしてから注射します
手のひらは神経が多く、ブロック麻酔をしないと非常に痛い部位です。麻酔クリームでは、ほとんど効果がありません。そのため当院では、手首のあたりに麻酔をして手のひら全体の感覚をなくす「ブロック麻酔」を行ってから注射します(片手8,000円)。
ブロック麻酔は、皮膚科専門医の下方 征 医師が、エコー(超音波で体の中を画面に映す機器)で手首の神経の位置を確認し、その周囲に麻酔液が広がるのを確認しながら行います。麻酔薬を神経のすぐそばに届け、麻酔をしっかりと効かせるためです。
麻酔の注射そのものにも痛みはありますが、針を刺すのは2〜3か所と少なく、採血と同じくらいの痛みです。麻酔の効き方には人によって差がありますが、当院ではエコーを使って麻酔をしっかりと効かせ、手のひらの感覚がなくなったことを確認してから、ボトックスを注射します。注射の途中で痛みを感じたら、遠慮なくお伝えください。
ブロック麻酔をした手は、1〜2時間ほど動かしにくくなります。車や自転車の運転、手を使う予定は入れずにお越しください。
ワキのボトックスの痛みとの違いは、ワキ汗ボトックスは痛い?痛みを抑える3つの工夫で解説しています。
05 費用はいくら?手汗ボトックスに保険は使える?
手のひらのボトックスは保険が使えず、自由診療になります。当院の料金は片手33,000円(50単位)からで、ブロック麻酔が別に片手8,000円かかります。
保険は、国が薬ごとに認めた使い道の範囲でしか使えません。ボトックスが汗の治療で認められているのは重いワキの多汗症だけで、手のひらへの使用はこの範囲外(適応外使用)にあたるためです。
料金の内訳は次のとおりです。
料金は片手あたりです。ブロック麻酔の料金は薬の料金とは別にかかります。両手の場合は2倍になります。
汗の量が多い方や、長く効かせたい方には、片手100単位をおすすめしています。片手100単位で効果が足りなかった方には、150単位を打つこともできます。
保険が使える手汗の薬には、塗り薬の「アポハイドローション」があります。3割負担の方で、1本(約1か月分)あたりの薬代は約1,400円です(別に診察料などがかかります)。詳しくは手汗治療薬アポハイドローションの効果と副作用をご覧ください。
06 ほかの手汗治療と比べると?デメリットの違いと向いている人
手汗の治療には、塗り薬は毎日塗る手間とかぶれ、飲み薬は全身の副作用、注射は費用と麻酔の必要・握力やつまむ力の低下という、それぞれ別のデメリットがあります。当院でご案内している治療を並べると、次のとおりです。
| 治療 | 保険 | 続け方 | 主なデメリット |
|---|---|---|---|
| 塗り薬 アポハイドローション | 使える | 毎晩寝る前に塗る | かぶれ、口の渇き。手についた薬が目に入ると、まぶしく見えることがある |
| 塗り薬 塩化アルミニウム | 使えない (当院1本3,000円) | 寝る前に塗る | かぶれ、かゆみ |
| 飲み薬 プロバンサイン | 使える | 医師の指示どおりに飲む | 全身に効くため、口の渇き、便秘、目のかすみなどが出ることがある |
| 注射 手汗ボトックス | 使えない | 4〜6か月ごとに注射 | 握力・つまむ力の一時的な低下、麻酔が必要、費用 |
表にはありませんが、手汗には手術(汗を出す指令を伝える胸の神経を切る手術)という方法もあります。ただ、手術のあとにほかの場所の汗が増える「代償性発汗」が問題になることがあります。注射では、手術のような重い代償性発汗はほとんど起こらないとされています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、体への負担や費用が少ない治療から段階的に進めることが勧められています。手のひらの場合は、まず塗り薬から始めるのが一般的です。
そのうえで、手汗ボトックスは次のような方に向いています。
- ・塗り薬を続けても、汗が十分に減らない方
- ・毎晩薬を塗るのが負担な方
- ・試験や就職活動、結婚式など、汗を抑えたい時期がはっきりしている方
- ・飲み薬の全身の副作用が気になる方
どの治療が合うかは、最終的には診察で医師が判断します。気になる方は、渋谷スクランブル皮膚科へご相談ください。
07 渋谷スクランブル皮膚科の手汗ボトックス
当院では、保険の塗り薬から手汗ボトックスまで、同じ皮膚科専門医にご相談いただけます。塗り薬で様子を見るか、ボトックスにするかは、汗の量と生活に合わせて一緒に考えていきます。
- ・薬の種類:韓国製のボツラックスと、アラガン社製のボトックスから選べます。主な違いは、国内で承認されているかどうかと料金です(詳しくは記事の最後の注意事項をご覧ください)
- ・両手の治療:両手を同じ日に治療できます。多くの方が、両手を同じ日に治療することを希望されます
- ・ご予約:当院では、手汗ボトックスを「汗止め注射」というメニュー名でご案内しています。WEB予約では、汗止め注射のメニューから「手のひら」をお選びください
手汗ボトックスは、効果が切れる4〜6か月ごとに通う治療です。渋谷駅から徒歩1分、平日は20時まで診療しているため、お仕事帰りにも通いやすい環境です。
リスクと治療を受けられない方
次のようなリスクがあります。
- ・注射した部分の点状の内出血の跡(数日で目立たなくなります)
- ・握力や指先でつまむ力の一時的な低下(ペットボトルのふたなどが、初めの数週間は開けにくいことがあります)
- ・ブロック麻酔によるもの:麻酔の注射時の痛み、内出血、しびれが長引くこと、まれに神経障害や麻酔アレルギーのリスクがあります
ボツリヌス製剤に特有の、まれなリスクについては、記事の最後にある注意事項をご覧ください。
次の方は、治療を受けられません。
- ・妊娠中・妊娠している可能性のある方、授乳中の方
- ・ボツリヌストキシンにアレルギーのある方
- ・重症筋無力症と言われたことのある方
麻酔薬にアレルギーのある方は、事前に医師にお伝えください。
Q&A よくある質問
Q.手汗ボトックスの効果は、いつから出てどのくらい続きますか?
注射の1〜2週間後から効果が出はじめ、平均で4〜6か月続きます。効果の続く期間には個人差があるため、手汗がまた出るようになってきて、気になるタイミングで再び注射します。
Q.片手だけでも受けられますか?
受けられます。当院の料金は片手ごとの設定です。両手を同じ日に治療できますが、ブロック麻酔をすると両手が1〜2時間ほど動かしにくくなるため、帰り方も含めてご相談ください。
Q.手汗ボトックスが効かないことはありますか?
汗の量が多い方では、少ない量の注射では効果が足りないことがあると報告されています。当院では、汗の量が多い方には片手100単位をおすすめしており、100単位で効果が足りなかった方には150単位を打つこともできます。
Q.握力やつまむ力が弱くなったら、どうすればよいですか?
多くは時間とともに回復するため、様子を見ていただくのが一般的です。日常生活で困る場合や心配な場合は、当院にご相談ください。次回の注射では、量や注射する部位を調整します。
参考文献
- 日本皮膚科学会 原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版(日皮会誌 133(13):3025-3056, 2023)
- Saadia D, et al. Botulinum toxin type A in primary palmar hyperhidrosis: randomized, single-blind, two-dose study. Neurology. 2001;57(11):2095-2099.
- PMDA アポハイドローション20% 審議結果報告書・審査報告書(2023年)
- 米国FDA BOTOX(onabotulinumtoxinA)添付文書
- 米国FDA LETYBO(letibotulinumtoxinA-wlbg)添付文書(2024年)
- 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ – 厚生労働省
料金について:記事内の料金はすべて税込(2026年9月時点)です。片手33,000円(50単位)からの料金は、韓国製・国内未承認のボツラックスを使用した場合です。アポハイドローションの薬代は2026年9月時点の目安です。
当院で行う手汗ボトックスは、自由診療(保険適用外)です。当院では、国内承認薬であるアラガン社製ボトックスと、韓国製の未承認医薬品であるボツラックスをご用意しています。手のひらへの使用は承認された効能・効果に含まれないため、どちらの製剤でも適応外使用にあたります。
- ・未承認である旨: ボツラックスは、国内において医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医薬品です。国内承認薬とは異なり、我が国において品質・有効性・安全性の審査を受けたものではありません。
- ・入手経路: ボツラックスは、当院医師の判断と責任のもと、個人輸入により入手しています。個人輸入に関する注意事項は、厚生労働省のページをご確認ください。アラガン社製ボトックスは、国内で承認された製剤を国内の医薬品卸から購入しています。
- ・国内の承認医薬品等の有無: ボツラックスと同種同効の国内承認医薬品として、アラガン社製ボトックスがあります。ただし国内には、手のひらの多汗症を効能・効果として承認されたボツリヌス製剤はありません(手のひらの多汗症に承認されている国内の医薬品には、塗り薬のアポハイドローションがあります)。
- ・部位に関する適応外使用: 国内承認薬のボトックスで多汗症について承認されているのは、重度の原発性腋窩多汗症(ワキ)です。手のひら(手掌多汗症)への使用は、どちらの製剤でも適応外使用にあたります。
- ・諸外国における安全性等: ボツラックス(一般名:レチボツリヌストキシンA)は、韓国の食品医薬品安全処(MFDS)の承認を取得しています。同じ成分の製剤は米国でも2024年に承認されていますが、承認された効能は眉間のしわの改善です。アラガン社製ボトックスも、米国で多汗症について承認されているのはワキのみです。手のひらの多汗症はどちらの製剤でも承認されておらず、情報が不足しているため、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。
- ・主なリスク: 内出血・腫れ・痛み・アレルギーのほか、ボツリヌス製剤に特有のリスクとして、注射した部位の近くの筋力低下(指先の力が入りにくくなるなど)があります。また、まれに、注射した部位から離れた場所に薬の作用が広がり、脱力、ものが二重に見える、飲み込みにくいなどの症状が出ることが報告されています(米国の添付文書の警告)。
- ・救済制度: 未承認医薬品を用いた治療、および承認薬であっても適応外使用に該当する治療は、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
お問い合わせ:渋谷スクランブル皮膚科(東京都渋谷区神南1-23-13 丸大ビル7階)
電話 03-6712-7375




